論理的になるおすすめ本11選

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  • 公開:2018-11-19
  • 更新:2024-11-12
  • 文章量:3833
  • Life

TL;DR

分からないことがあったらすぐに検索して、簡単に専門家レベルのコードや知識を入手することができるようにはなったけど、どうも「深く考える力」が無くなっているような気がします。

これはいかんということで、今年は自己啓発書・ハウツー・プログラミング・ビジネスの類は一切読まずに、熟考できるような本を中心に読むようにしています。ということで今回は、考える力が必要とされるプログラマーこそ読んでもらいたい「論理的に考える力」「抽象化する力」を鍛える本をまとめました。速読せずにディープ・リーディング(深い読み)し、思考回路を作りましょう。

地頭力を鍛える

細谷功

グーグルの社員採用試験として知られているフェルミ推定について興味があったので読んだ。フェルミ推定というのは、数量化が難しいものに対して「あたり」をつけロジカルに答えを導くための思考法。「東京に信号機は何基あるか?」など、把握することが難しい数量について、ロジックを用い、短時間で概数を求める方法などが書かれていた。少ない情報から高次の視点で答えを推測する訓練になる。表面的なことではなく根本的要因を探り、真の問題解決につなげる、仮説から答えを導く思考力がつく。

他に、高次の視点から問題点を発見する抽象化、類推(アナロジー)を用いて推測する力、要約のように本質を捉える考え方などが書かれていて、主に問題解決に使えるコンサルタントにおいても力を発揮するかもしれない。

メタ思考トレーニング

細谷功

メタ思考とは、物事を一つ上の視点から眺める抽象的な思考法。アナロジーとは類似のものから推論すること。常識を疑い、無知の知を認識するにはどうすればよいのか、どう類推していくのか。この本はメタ思考を強化するための練習問題が挟まれており、受動的に読めないようになっている。自己中心的なバイアスを薄め、他人の言葉の真意を汲み取る力をつけるためにも読んでおきたい。

パンセ

パスカル

高校の時に偏差値 110 を越えて京都大学法学部に現役で受かった同級生に、デカルトの話をしたらパスカル(パンセ)とフーコーを推薦されたので読んでみた。

ヘクトパスカルという単位や幾何学などパスカルは数学・力学で業績を残す。デカルトの幾何学の精神に繊細な精神を対置する。遺著であるパンセは思考を意味し、パスカルが考えたことがまとめてある。といっても宗教色が強い。「人間は考える葦である」という有名な言葉もパンセの中でパスカルが残した言葉で、人間の中間的存在(神と動物)を表現した。机に置いておいて何度でも読めそうな本。

ミシェル・フーコー 地の考古学

方法序説

デカルト

哲学者デカルトが 1637 年に発表した方法序説。正式なタイトルは「理性を正しく導き、学問において真理を探求するための方法」。学問において問題を解決する方法論、モラルとは何か、形而上学(簡単にいうと哲学)についてなどが述べられていて、今日の学問の基本的な基準となる哲学の原理と方法が示される。

方法序説で示された哲学は、学問以外にも応用することができる論理的な基本原理といわれている。形而上学の章での「我思う故に我あり」という有名な言葉は、全てを疑って迷って途方に暮れていたときに「わたしは考える、ゆえにわたしは存在している」という自己肯定を示した。

論理哲学論考

ウィトゲンシュタイン

ウィトゲンシュタインはウィーンで生まれた哲学者。哲学問題は全て解決したと思い哲学を離れるが、再び哲学活動を開始する。「およそ語られうることは明晰に語られうる。そして論じえないことについては、ひとは沈黙せねばならない。」から始まる明晰な哲学書。

答えが無いもの、形而上学(哲学)について語るべきではないと一括。そして「どれだけのことを考えることができるのか?」という問題を思考によって答えるのは難しいと述べた上で、言語と論理を見極め思考の限界を示そうとする。本書で頻繁に登場する言葉(事実:現実性、事態:可能性)、(像:事実を描いたもの)(定項:定数、変項:変数)などを抑えておくと読みやすい。

東大入試に学ぶロジカルライティング

吉岡友治

自分の感じたことを述べるのは感想と言い、同じ内容をやさしく言い直すことを説明という。理解とは具体的な表現に基づいて、筆者の言わんとしていることを推測し、事態をクリアにし、分かりやすく言い換えること。論理的文章は最初の前提を次々に言い換えたもの。

この本はロースクールの問題を題材に、ロジカルな文章を書けるように構成されている。読むだけでなく、本当に理解しているのか実際に紙に書き出してアウトプットしていくことにより論理的思考が強化される。設問攻略の手法には「難問は分割して、理解せよ」というデカルトの原理も使われている。自分の思考との違いを明確にするために、読み流すのではなく紙に書き出して、進めていくと理解が深まる。

入門!論理学

野矢茂樹

論理学というのがさっぱりわからないから読んでみた。論理学で使う記号はほとんど使われていないから初心者でも理解しやすい。推測と推論の違い、演繹(前提を認めたら、必ず結論も認めなければならないような導出)など論理学が扱う対象を学べる。そもそも論理学の本というのは論理的に書かれているから、読んで理解することで論理トレーニングになる。そんなわけで、本書に出てきた言葉を覚えるよりも、理解しながら読むことが大切。

「言葉と言葉をきちんと関係づけて使うひとは論理的であり、脈絡なく発言する人は非論理的」と書いてあることから、思いつきで書いている私のような文章は非論理的なんです。

本を読む本

M・アドラー

良書を知的に読む技術に留まるだけでなく、本を理解し論証・批評する道筋を示し、能動的に本を読み熟考する重要性が書かれてある。本を読むときは理解するだけではなく、熟考することが大切。読書における熟考とは準備・理解・論証を行ったうえで、批評があるならば、賛成反論の根拠を明確に指摘し理由を述べることである。このことから、熟考には時間がかかるものであり、速読や乱読は情報を増やすことができても、知識を深めたり、思考能力を高めることはできない。

自分で答えを探し考えることこそ人間的な読書。この本のテーマは「深く考えること」である。受動的に読書するだけでは理解したとはいえない。論証と批評を論理的に明示し、熟考してこそ積極的読書といえる。

思考の整理学

外山 滋比古

受動的に知識を得るだけのグライダー人間はコンピューターに仕事を奪われる。知識を得たうえで能動的にものごとを考える人間になるには、どういうことを心がければよいのか。この本は、能動的にアイデアを生み出す方法、思考を深めるための技術や考察が書かれているが、大切なのは、あとがきで筆者が「ハウツー本にならないようした」と記してあることからも分かるように、技術や方法より「思考」の重要性を述べてある点。

今世紀で人類は終わる?

マーティン・リース

ケンブリッジ大学 宇宙論・宇宙物理学教授、宇宙物理学の世界的権威であるマーティン・リースが、テクノロジーが引き起こすかもしれない世界滅亡までのシナリオを述べる。近年、世界を滅ぼす要因となるものは核だけでない。また、国家だけでない。個人でも合成可能な人工ウィルス、ナノマシン増殖による大陸壊滅もある。加速器実験により作り出されるストレンジレットは触れたもの全てを奇妙な物質に変え、地球を 100 メートルの大きさに圧縮、最悪のシナリオで宇宙全体に影響を及ぼす可能性もある。

将来バイオやサイバー技術の力は大きくなり大きな利益がもたらされる反面、危険や倫理問題もつきまとう。史上最大の危機にひんする今、私達はなにを配慮しなにをすべきなのか。近年テクノロジーを国家から個人が扱えるようになった。これは昔より一層危険が身近になったということを示しており、大惨事になる前に科学者や個人は何をすべきか考えるべきである。

第三のチンパンジー

ジャレド・ダイアモンド

この本のテーマは「人間とはどんな生き物か」ということ。人間の起源から滅亡に至るまで、生物学的視点、歴史と地理をふまえ言及。人間の原始的な行動や性質を、これまでの歴史と照らし合わせながら解説。生物の究極的な資質は「生存」であり、人間は遺伝子以外にも情報や文化を存続させていく高度な生物である。

この本によって、地理と環境によって人間がどんな行動を起こし、どう滅びていったのかこれまでの歴史を知ることができる。過去の歴史を知る、ということは今後の人間の行動を予測する材料を持つことに繋がるし、人間と動物の共通点や相違点を知ることで、人間が本能的に起こすであろう行動や思考回路を学ぶことができるんじゃないかと。

おすすめしたい本はまだ沢山ありますが、今回は筆者が先月読んだ本を中心に「考える力」を鍛える本をご紹介しました。

論理的になるおすすめ本11選